ハイラル城の大いなる書庫亭

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ゼルダの伝説 黄昏の姫に微笑みを 狐坂

2014/10/02 (Thu) 08:04:43

彼女が涙をぬぐって、またなと呟いたその表情に、僕は気が付かなければいけなかった。

その表情はまるで、魔王に挑む勇者の表情であるかのような。

その表情はまるで、勇者に臨む魔王の表情であるかのような。

ぬぐわれた涙に気を取られ、僕は彼女のそんな表情に気が付かなかった。気が付くことが出来なかった。
まるで、愚か者のように、呆然と、その涙が描く軌跡を見送りそして、無残に砕かれる鏡を見た時、そこでようやく気が付いた。
彼女の、その表情が、ガノンドロフと対峙した僕と姫様をハイラル城の外にテレポートさせた時と、同じものだったことに。


その力強く儚い表情の名前は、覚悟。


呆然とした、その致命的なまでの、空白が、僕と彼女の距離を絶望的なまでに引き離した。
振り返ったとき、彼女はその表情を浮かべたまま、影の世界へと消え去る直前だった。

だけど僕の手はうごかない。
ーーー彼女の考えがわかってしまったから。

だけど僕の足はうごかない。
ーーー彼女の望みがわかってしまったから。

だけど僕の心は悲鳴をあげる。
ーーー彼女と引き離されることが耐えられなかったから。

だけど僕は。

ーーー彼女は。







そして、彼女は消えた。



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彼女が影の世界へと消え、世界が一時的に平和になってから一ヶ月。姫様、シャッド、アッシュ、テルマさん達は事後処理に追われ、多忙な日々を過ごしているとのことだけれど、僕はまだ心の整理がつかないままでいた。
「・・・・・・ミドナ」
この一ヶ月で習慣となってしまった、彼女の名前を呟き、溢れ出しそうになる涙と気持ちを静める。

何故、と言う気持ちと
会いたい、と言う想いと
そうしなければいけなかった、と言う理解が
僕の中で嵐のように荒れ狂う。

手を伸ばすまでもなくすぐそばにいた存在が急に消えてしまうと、人はここまで脆くなってしまうのか。
自嘲気味に、薄く笑みを浮かべたつもりでも、鏡で見るまでもなく、自分の表情がぎこちなく歪んでいるのがわかる。


トアル村。僕の故郷。


ここに帰ってきたのは、つい先日だ。
賑やかなハイラルの城下町はたしかに彼女が居なくなった空白を一瞬だけ忘れさせてくれるけれど、その分、何気ない拍子に自覚する自分が一人だということに耐えられなくなって、逃げるように僕はこの村に帰ってきた。
ハイラルの城下町に、あんなに人が沢山いるのに、その中のどこを探しても彼女がいないということに、耐えられなかったのかもしれない。
村に帰ってからの、二、三日は村長さんに挨拶したり、先に帰ってきていたイリア、タロマロベスと、話したりとすぐに過ぎ去っていったけれど、ふと見上げた視線の先に彼女との記憶の残しを感じて、言葉を失ってしまう。

そんな僕の様子を見ても、何を聞くでもなく、村のみんなは暖かく迎え入れてくれるけれど、そこに彼女はいない。
その事実に絶望している自分が情けなくて、みんなに申し訳なくて、ため息が、独りでにもれる。

「・・・・・・ミドナ・・・・・・」

握り締めたてのひらから、チクリとした痛みがはしる。
見てみれば、白くなるまで握り締められた手のひらの皮膚を爪が裂いて血が流れ出ていた。
こんな、生きているとも死んでいるとも言えない状態でも、体は痛みを感じるし、血も流れる。
そんな当たり前のことがなんだかおかしくて、僕は今度こそはっきりとした自嘲の笑みをうかべた。

そんな時、コンコン、と入り口からドアを叩く音がした。

その音に我に帰り、僕はあたりを見渡した。
見慣れた机、かまど、部屋。
ここは僕の家だ。
窓から覗く外は月さえも浮かばない深淵。
夜。それも、深夜だ。

入り口のドアの向こうから、微かに人の気配がする。おそらく外にいる人物が持っているであろうランプの明かりがゆらゆらとゆれ、ドアの隙間から僅かにもれている。

こんな夜更けに誰だろう。

トアル村の夜ははやい。
家々の明かりが消えれば、光源となるものは空に浮かぶ月だけだ。
わざわざ遅くまで起きているものは少なく、夜ふかしをするくらいならばその分朝早く起きてしまおうと言う人がおおく、夜遅くまで起きてるのは警備のために夜巡回をしているモイさんか、眠れない日々を過ごす僕くらいのものだ。

コンコン、と、再びノックの音。

先程よりも音は小さく、遠慮がちだ。おそらく、外の人物にとっても、こんな深夜の来訪は本意ではないのだろう。

・・・・・・このまま、帰ってしまうのを待っていようか。

さいわい、眠っていてもおかしくない時間だ。この来客をやり過ごしたとしても、咎められることはないだろう。ランプの明かりはついているが、消し忘れてしまったと言っても不都合はない。

コン・・・・・・コン。

二回目よりもさらに遠慮がちな、三度目のノック。
僕は覚悟を決めてドアを開いた。
どうせ眠れないんだ、それだったら誰かと話した方がよっぽど良い。少なくとも、我に帰るまでは、この、空白を意識しなくてすむ。
「あ・・・・・・、ごめんなさい。起こしちゃったかな?」
そこにいたのは、イリアだった。
夜露をしのぐためだろうか、丈の長いローブを身をまとい、フードを目深にかぶっている。なんとなくだけど、まるで人目を避けるかのような格好だな、と思った。
「いや、そんなことないよ。ちょうど眠れなくて目が冴えてたとこだから・・・・・・」
「そっか、よかった。起こしちゃったら、わるいもんね」
そう言って、イリアは照れくさそうに微笑んだ。

嘘は、言ってない。
彼女と別れてから、まともに眠れた日なんてないのだから。いつだって目が冴えて、まるで気を失うかのように明け方に眠りにつく。徐々に蝕まれているのがわかるが、それでも、眠れないのだから仕方がない。

「それで、こんな夜遅くにどうしたの?夜抜け出したりしたら、村長さんにおこられるよ」
イリアに椅子を勧めながら、ヤギのミルクを温めなおす。
「お父さん心配症だからね。カカリコ村から帰ってきたときなんかすごかったんだから」
苦笑混じりにそういうイリアの顔は幸せそうで、つられて僕も笑顔になる。
なんとなく、夜抜け出しても心配はするだろうけど、イリアに、対して甘い村長さんが怒ることはないだろうな、とぼんやり思いついた。
「それは、そうだろうけど、あんまり心配させちゃダメだよ?」
あったまったミルク入れたコップををイリアに差し出し、自分用にもコップにそそぐ。
「ありがと。・・・・・・ん、おいし。それはわかってるけど、お父さんは過保護すぎるのよ。私だって、もう子どもじゃないのよ」
そう言ってプンプンとおこるイリアを見て、村長さんが心配になるのもわかるけどなぁ、と内心考える。もちろん、表情にはださないけど。
「大人からみたら、僕らはみんなまだ子どもだよ。手間のかかる、大事な大事な子ども。まぁ、イリアの場合、そういうところが素敵なんだろうけどね」
なんて茶化していうと、イリアは顔を真っ赤にして、
「す、素敵なんていわないの!私は、ほら、その、なんていうか、私よりリンクの方が・・・・・・」
そこまでいって、慌ててかぶりをふる。
「そ、そういう話をしにきたんじゃないの!」
バンバンと机を叩いて、気を取り直す様にイリアは、ごほんと、咳払いをした。その仕草がおかしくて、僕はなんとなくにやにやしてしまう。
「にやにやしないの!」
「ご、ごめん」

おこられちゃったよ。

けど、多分気持ちを切り換えたのだろう。それまでとはうってかわって、イリアは真面目な、気を引き締めた表情になった。

その顔が、僅かに彼女の最後の表情とかぶる。

視線から目をそらすように、立ち上がりヤギのミルクを取りにいく。
「ねぇ、リンク?」
「何?イリア」
振り向かず、返事をする。
「最近、眠れてないの?」
「ん、まぁ、そうだね・・・・・・」
「そっか・・・・・・」
どうやら、バレていたらしい。極力人と会うときは気を引き締めて、心配をかけないようにしていたのだけど、やはり長い付き合いだからか、ほかの人は騙せても、トアル村の人は騙せなかったようだ。
「バレてない、つもりだったんだけどな・・・・・・」
「多分、みんなが気付いてるわけじゃないよ?けど、私とか、モイさんは気付いてるんじゃないかな、リンクが無理してること。長い、付き合いだし・・・・・・」
心配そうな顔で、振り向いた僕を見上げる。
「心配しないでいいよ、ずっと旅をしてたから、緊張がまだ抜けきらないんだよ。もうちょっと落ち着いたら、夜もぐっすり眠れるようになるからさ。大変だったんだよ、夜寝る時なんか火を絶やさないように・・・・・・」
「嘘つき!!」

手を叩きつけられたテーブルから、コップが転がり落ちて割れる。
半分くらい残っていたミルクが、床にジワジワとひろがっていく。
「・・・・・・どうして、そんな嘘なんてつくの?」
イリアの、絞り出すような声。
「ねぇ、リンク。リンクが何を悲しんでるのか私にはわからない。わからないけど、リンクが悲しんでることはわかるんだよ?」
責めるように僕をみつめる瞳が、悲しげに歪む。
「どうして・・・・・・助けてっていってくれないの?どうして、独りでなんとかしようとするの?そんなに、私は・・・・・・私達は頼りないの?そんなに、私達は、リンクの中でどうでもいいの?!」
悲しくて、悔しくて、けど責めるのは筋違いで。感情がぐちゃぐちゃになったまま、イリアは叫ぶ。
「私は嫌だよ・・・・・・。リンクに助けてもらうだけのままは・・・・・・。リンクの力になりたい、助けになりたい、頼られたい。そう思うことすら、今のリンクには迷惑なの?!」
イリアが、胸の中に飛び込んでくる。ほのかに、イリアの、甘い匂いが鼻をくすぐる。
「イリア・・・・・・」
「・・・・・・もっと、私を、頼ってよ」
涙声が胸の中から響く。背中にまわされた手が、はなさないと言わんばかりに僕を抱きしめる。

「イリア、僕は」

僕からイリアの表情は見えない。俯き、胸に顔をうずめるように僕に抱きついている。引き離そうとイリアの肩をつかむと、嫌がるようにイリアは僕と近づき、バランスを崩した僕は強かに尻餅をついた。
「いたたた・・・・・・」
あまりのことに、思考が追いつかない。
現状は認識できるけど、心情を理解できない。イリアのも、僕のも。
そのまま押し倒され、イリアを下から見上げるような形で目があう。
泣きはらした、真っ赤な瞳。
目尻にたまった涙が、宝石のように光を反射する。
「・・・・・・綺麗だ」
無意識に言葉がもれた。

そして僕は、重ねられた唇からイリアの体温を感じた。

離された唇からイリアとも僕のともわからぬ唾液が糸を引く。つぅとゆっくり重力に引かれたそれは、ぷつりと切れて僕の胸を濡らした。

鼓動が、早鐘のように、頭の中で響く。うるさすぎて、その鼓動しか聞こえてこない。
両手で顔を抱きすくめられ、再び貪るように唇を奪われる。

思考がまるで追いつかない。

イリアの、表情はわからない。

見えない。見えている筈なのに、まったくわからない。

口づけはたっぷり数分、それとも一瞬だったのか、気が付いた時には、イリアは僕から身を離し、真っ赤な顔で僕を見つめていた。

「イリア、その・・・・・・」
「っっっ!!!お願いだから何も言わないで」
真っ赤な顔を、両手で隠し、けど指の隙間からこちらをみながら、早口でまくし立てる。
「ちちちち、違うの!!こ、こんなことしにきた訳じゃなくて!!リンクを元気づけようとして!!けど、あまりに、はっきりしないからちょっとだけイライラ・・・・・・じゃなくて!!」
さっきまでの思いつめた表情はどこに、真っ赤になったり、真っ青になったり、イヤイヤと首を振りながら弁解するようにさけぶ。
「頼ってよもらえなくてムッと・・・・・・でもなくて、力になれなくて悲しくて!!弱ってるリンクも可愛いなぁとか!!けど、その、とにかく!!違うんだからね!!」
何がどう、違うと言うのだろうか。
「私は!!その・・・・・・・・・・・・」
力なくうなだれ、無言になる。どことなく、親とはぐれた子どものように見えて、微笑ましく思ってしまう。なんというか、可愛らしいのだ、この幼なじみは。

いつもはきはきして、頼んでもいないのに世話を焼いてくれて、しっかりもので、記憶を失って大変だった時も、自分のことよりも、僕のことを心配してくれていた。なんというか、おせっかいというか。

そんなイリアからすれば、今の自分は間違いなく見ていられなかったであろう。放っておけばいつの間にか消えてしまいそうに見えていたのだろう。

置いていかれるのは誰だって悲しい。

そのことを、置いていく本人はいつだって気付かないのだ。いや、そうじゃない、気が付いていても、置いていくのだ。
置いていく本人だって悲しいのだ。きっと、そこに気が付かないわけがない。

僕を置いていった彼女だって、悲しいだろう。それがわかっていたから、僕はあの時動けなかったのだ。

そのことを、すっかり忘れていた。
いや、思い出さないようにしていたんだろう。
僕は置いていかれた。だから、追いかけちゃいけない。無理にそう思い込むようにしていた。

なぜなら、追いかけて、拒絶されたらきっと僕は立ち直れない。だから、それが怖くて、僕は素直に彼女に、従おうとした。けど、それはもうやめにしよう。

たとえどんなに罵らられても、たとえどんなに嫌われても、僕は僕のためにもう一度彼女に会いにいく。

みんなにも、すごく迷惑をかけてしまった。
もちろん、イリアにも。

「ねぇ、イリア」
「な、なに?!」
うつむいたまま、こちらを見ようともせず、イリアがこたえる。
その様子に少しだけ微笑みながら、伝える。
「ありがとう、僕を救ってくれて」
「・・・・・・・・・・・・リンク!!」

その言葉にまるで子どものように泣き出してしまったイリアをあやしながら、僕はかたく心に誓う。
もう一度、彼女に会うと。

たとえどんなに時がかかろうとも。
たとえどんなに道がけわしくとも。
たとえどんなに術がなかろうとも。


しばらくしてどうにか落ち着いたらしいイリアはどこかバツが悪そうな顔をしながら、ちらちらと僕の方を伺っている。
僕はというとこぼれてしまったミルクを片付けたり、割れたコップを片付けたりしながら、やっぱりちらちらと、イリアを伺っていた。
沈黙が、重い。
いつの間にか朝日がさしていて、窓の外はすっかり明るくなっている。
なんとかしなければ、と、意を決して口を開く、が。
「ねぇ・・・・・・」
「な、なに?イリア?」
僕が口を開くより先に、イリアが口を開いた。その表情は、どことなく優れない。
「やっぱり、また旅にでるの?」
「そう、だね。たぶん・・・・・・いや、絶対そうなると思うよ」
「そっか、また、出ちゃうんだね」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
再び、沈黙。
俯いた拍子に前髪が顔にかかり、イリアの表情はみえない。
なんと言葉をかけるべきか、僕はわからないでいた。
ここまでされて、イリアの気持ちに気付かないほど僕は鈍くはない。痛いほどイリアの気持ちは伝わってきている。
だけど、僕にとっての特別はイリアじゃなくて、彼女なのだ。
そこは、どんなことがあっても譲れない。たとえ、誰を傷つけることになったとしても。それが、大切なトアル村の、大切な大切な幼なじみだったとしても。

「・・・・・・ねぇ、イリア」
「なによ・・・・・・」
「明日には、村をでるよ」
「そう」
「しばらくは帰ってこれない。もしかすると、ずっと帰ってこれないかもしれない。それだけ・・・・・・なんていうか、遠いところを目指すんだ」
「そう」
イリアの声に感情がこもっていない。いやちがう・・・・・・。出来るだけ、感情をこもらないようにしているんだろう。見れば、微かに肩が震えている。
「どうやっていけばいいのか、方法もわからないし、正直たどり着けるかまったくわからない。だから、イリア、君は」
「待って!!」
僕の言葉は遮られる。だけど、僕は止めない。止めるわけにはいかないんだ。
「いいや、止めない。イリア、君は君の幸せを見つけるんだ。僕はそれを、ずっと、願ってるよ」
「・・・・・・なんでよ、どうしてよ・・・・・・」
イリアの顔も見ず、一息に言いきる。気が付けば、僕の視界も僅かに滲んでいる。どうして僕が泣くんだ。泣きたいのは、僕じゃない筈なのに。
静かな、イリアの嗚咽だけが部屋に響く。せっかく泣きやんだのに、どうしてまた泣かせてしまったのか。自分の不甲斐なさでどうにかなりそうになる。けれど、必要なことであることも、理解している。

「ねぇ、リンク・・・・・・」
「何?イリア」

「絶対に、幸せになってよ?」
「ああ、わかったよ」

「ほんとの、ほんとによ?」
「ああ、ほんとのほんとにだ」

「絶対にだよ?」
「ああ、約束するよ」

力強く頷く。
なんでこの幼なじみはここに来て僕のことを心配をしてるんだ。
嬉しくて、けど悲しくて、胸がしめつけられる。

「そっか。わかった。なら、この話はもうおしまい。」
「うん、わかったよ」
「じゃあ、私はそろそろ帰るね」

そう言って、僕の方を見もせず、イリアは、立ち上がる。そのままドアへと歩いていき、目もとを拭ったあと、僕の方へと振り向く。
目が赤いのが、ひどく痛々しい。

「じゃあ、気をつけて。見送りはたぶん行かないと思うから。ここでお別れだね」
「ああ、わかった。十分気をつけるよ。イリアもどうかお元気で」

かわす言葉は少な目。
お互い、言いたいことはまだあるし、言わなきゃいけないこともまだある気がする。
けれどそれは、もう言わない言葉。
たぶん、これが僕とイリアの、最後になるだろう。
また会うかもしれないけれど、その時はきっと、もう、タイミングが違うのだ。少なくとも、この話の続きを行うことはない。

「じゃあね、リンク」
「ばいばい、イリア」

お互い照れくさそうに抱きしめあい、そして、別れをつげる。
ゆっくりとドアをあけ、

躊躇は一瞬。

イリアはドアの向こうへと消えていった。

バタン、とドアが閉まった。

部屋に、独り取り残される。
いや、独りで残ったのだ。置いていかれたのは、僕じゃない。イリアだ。

「ごめん・・・・・・イリア」
幼なじみの名前を呟く。

いつもはきはきして、頼んでもいないのに世話を焼いてくれて、しっかりもので、記憶を失って大変だった時も、自分のことよりも、僕のことを心配してくれていた。なんというか、おせっかいというか。

そんな幼なじみと、僕は別れを告げた。

誰よりも大切で、誰よりも大事だった君よ。どうかお幸せに。 そのとなりに僕はもういないけれど、どうか、どうかお元気で。

ドアの、外から嗚咽だけが響き、そして、走り出す足音が聞こえた。

ごめんなさい。あなたとともに生きていけなくて。
ぼぅと、立ち尽くす僕の前に気が付けば村長さんが立っていた。
いつの間に入ってきていたのか、まるで気が付かなかった。

「ああ、おはようございます、村長さん」
「ああ、おはよう。リンク」
頭が、緩慢に働く。今だけは、何もかもが億劫だ。
「・・・・・・わしは、リンクとイリアが一緒になるとばかりおもっていたが、そうはならなかったようじゃな」
「・・・・・・はい」
なんと答えるべきか、一瞬迷ったが、素直に答えることにした。どう言ったところで、結論はかわらない。
「わしが言えた事ではないが、それが一番イリアにとって幸せなことだろうと、信じて疑っておらんかったよ」
「それは・・・・・・すみませんでした」
「いや、謝ることではない。それよりもリンク。また、村を出るのか」
「はい、出来るだけ早く。多分、明日には出発するかと」
「そうか、また、寂しくなるな・・・・・・」
「・・・・・・」

なにも、言葉がでてこない。

「気をつけていくんだぞ」
そういって、頭を撫でられる。くしゃくしゃと、力強く、豪快に。
あぁ、と、そこで自覚する。
僕はまだまだ子どもだ。このトアル村の。
大人たちには全然かなわない。目尻の端から、熱いものが込み上げてくるがなんとか押さえつける。
鼻をすすり、目の前にいる大人を見上げる。

「お世話に、なりました」
「ああ、こちらこそ」
にやっと笑い、村長さんは家から出ていった。

僕の胸の中は悲しかった。
けど、暖かくもあった。
きっとどちらも与えてくれたのが、この村だ。

僕の故郷。

明日、僕はこの村からふたたび旅立つ。

彼女に会うために。

Re: ゼルダの伝説 黄昏の姫に微笑みを - 狐坂

2014/10/03 (Fri) 09:03:45

ご挨拶。
どうも、こちらをご覧いただき、ありがとうございます。
まずは、自己紹介が遅くなった非礼をお詫び申しあげます。

というのも、投稿後即仕事→風邪ひきによるダウンと重なってしまい、昨日1日ここに来ることが出来なかったためであります。投稿後の行間変更など、色々いじっていたら時間がなくなってしまいました、、、。

さて、実はここを利用閲覧するのははじめてでありまして、荒らしスパム等が原因で、投稿作の大部分落ちてしまったとのこと、非常に残念におもいます。
まだ見ぬ名作迷作、良作を期待したどり着いたので、もう少しはやくここに来ていさえいれば、、、と。
ですが悲しんでばかりもいられません。枯れ木も山の賑わい的に、今回作品を投稿のさせていただいた次第であります。

ともあれ、拙くキャラ崩壊イメージと違うなど、色々思うところがあるとは思いますが、生暖かく見守っていただければ幸いです。

以上、必要以上に堅苦しくなりましたが、初投稿の挨拶とかえさせていただきます。

感想、ご意見などいただけますと、泣いて喜んで死ぬので、よろしければお願い申し上げます(º∀º)

でわ、失礼いたします。

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