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懐古と追悼と祈りと - 無名
2020/05/11 (Mon) 19:17:10
昔々の話をしよう。
まだこの書庫が多くの声に包まれていたころの話を。
この場所では多くの伝説が生まれていた。
黄昏の世界を、少女と勇者が駆ける物語があった。
4色の剣士たちが笑いあって旅をする物語があった。
影の勇者と風の魔人の生活を綴った物語があった。
異世界の勇者たちが家族同然に過ごす物語があった。
冒険者たちが一堂に会し、旅立つ物語があった。
それらのほとんどは、悪意によって流され消えてしまったけれど。
素敵なお話がたくさんあったんだ、本当だよ。
僕も全てを記憶しているわけではないけれど、確かに此処には喜びが満ちていた。
この本を開いた君は、当時を知る人だろうか。
電子の海に流れ流されて、偶然辿りついただけの人だろうか。
最早この書庫に管理者は居らず、紡ぎ手も無く、寂れるのをただ待つばかりだ。
かく言う僕もこの書庫を離れた1人なのだけれど。
それでもこうして、此処に足を運んでしまうのは ──── 何故だろうね。
もしかして 君もそうなのかい?
当時を知る者にはもう会えないのかもしれない。
けれど、いつか、誰かが目にするかもしれない可能性にかけて、ここに記す。
僕は、この場所で多くを学んだ。多くの喜びを得た。
かつてこの場に居た貴方のお陰だ。どうもありがとう。
この書庫を旅立った貴方が、遠い場所で幸せでありますように。
そうしていつかまた、貴方に、貴方の作品に出会えますように。
あわよくばこの場所がまた賑わう姿が見たいと願いながら、今日はこの場を立ち去ろう。
Re: 懐古と追悼と祈りと - ツキ
2020/06/15 (Mon) 07:26:37
偶然とは思えない。
丁度一月ほど前に残された旅人の標を見る。
そうして目を閉じた。
僕はこの場をよく知るものとは言えないけれど。
…流れ者というには、少し思い入れがありすぎる。
懐かしい名前がいくつも蘇ったよ。
貴方は、…あなた方は、元気にしているのだろうか
随分と、このような場も減ってしまったね。
でも僕は、どうしたって昔ながらのこの場や
ここに類する場所が好きでね。
ある場所は、砂嵐吹く砂漠に沈み。
ある場所は廃墟と化し。
それでも僕にとって此処は、大切な場所です。
ありがとう、旅人さん。
あるいは、いつかの貴方へ。
どうか僕以外にも、あなたの声を目に留める人がいますように。
願わくば、此処がまた幾人もの旅人たちで賑わう場になるように
世界の片隅から、祈りを届けます。
Re: 懐古と追悼と祈りと - シュマ
2022/05/16 (Mon) 14:42:15
電子の海の片隅にこの書庫が未だ残っていたことの驚きと、
数年前にも同じことを思った旅人がいた喜びと。
同時に名前も忘れてしまった、暖かく優しい人たちとの思い出が浮かんでくる。
書庫を離れた今は文という文も書かなくなってしまったけれど。
思いを残す場を作ってくれてありがとう、旅人さんたち。
そしてまた新たな旅人が訪れることを祈っております。
Re: 懐古と追悼と祈りと - ---
2025/03/05 (Wed) 17:49:10
書き出ししか綴られていないメモ帳を開いては閉じて。
人の居ない廃墟に足を運んでは目を閉じて。
この場所で新たな物語を紡ぐ勇気はないが、こうしてまた訪れてしまう。
これは愛だろうか。哀だろうか。
あの日輝かしい物語を紡いでいた貴方へ、改めて遺そう。
15年。
数字にしてしまうと短く遠い昔、私はこの場所を止り木とするひとりだった。
あまりにも稚拙な文章を多くの先達に読んでもらった。
思い返すと恥ずかしいようなこそばゆいような。
けれどきれいな思い出だ。忘れたくない私の歴史だ。
今でも私は物語を通して世界を描いている。
この場所があったからだ。
この場所にあなたがいたからだ。
思い出の中にばかりあなたの物語がある。
読み返したくても読み返せない。
それがどうしようもなく寂しくて、どうにか続きを読めやしないかなんて欲張ってもみたりする。
今ここにこうして記して、あなたに逢えないかと悪あがきをしている。
この書庫はいつ消えるだろうか。
森の妖精が集う場所は辿り着けなくなった。
村の秘密の貝殻屋敷は姿を消してしまった。
管理者も戻ってはこないだろう。声を届ける場所もすでに無い。
いっそ自分が引き継げたらなあと思うのは欲張りだ。上手に後継できるとも限らないし。
わたしがこの墓標をたてたのは5年前。5年後にこの場所は遺っているだろうか。
懐古と、追悼と、祈りをあなたに。
そのうち我慢ができなくなったら、崩れ行くこの場所でまた何かを綴ります。
いつかのあの日 水飴と名乗っていたわたしより。